― ある日、森の中で(8年前) ―
おう、どうした。
ビビって声も出ねぇのか?
[>>0:52 自分の風体を見た少年は、てっきり縮み上がるかと思っていた。
まだ年若い―――15か6と言ったところだろう。
身長も、自分の胸の高さに届くかどうかという位。負けるはずがない。
なのに、少年は黙って此方を見つめる。その瞳に恐れはない。
>>0:161 実際、後ろから付いてきた少年は遠くで恐々と此方の様子を見つめている。
それが正しい反応だ。その筈だ。
然しながら、目の前のこの少年はどうして自分を、こんなにも真っ直ぐに見つめられるのだろう。
暫しの間。
キュベルドンの深い翠の傘の下、笛のような鳥の鳴き声が響く。
鳶だろうか。対峙する二人の間、鳥の影が横切る。]