[―肉を切り裂く音。そして血飛沫。胸から腹部にかけて斜めに出来た切創から溢れ出た血潮が絨毯に染み込む。痛みに顔を顰める弟は床に膝をついて。]「は…。」[ベネディクトは震える声で笑う。否、まるで笑っているように喉を震わせた。彼の本質は善なる者。憎らしい存在とはいえ、人を手に掛けた恐怖に片手で口元を覆う。けれど弟の身体は血の霧となり、再び目の前に現れた。ローブの下から覗く黒衣に裂かれた跡はあるものの、傷口からもう一滴も血は流れていない…。]