[待って、という単語にひゅうひゅうと喉が鳴る。
少女の背中を向ける動作で喉が見えなくなり、深紅の瞳をぱちぱちと瞬いた]
うぅ、 ウ?
[僅かに広がった視野、動くもう一つの影を認識した時には
顎を掴まれていた]
……!
[小瓶の中身はわかっていたのだから、そのままでもいいはずだった。
でもそうしたらジャンを助けられなくなる、とか、今この口へ薔薇の雫を注ごうとしているのがジャンだ、とか
一切の思考は回らない。
ただ、兎は何かされる、という理解だけで、防衛の本能へ任せて身を捩る]
んン!
[束ねられたままの両手を撥ね上げた。顎を掴む、ナニカを口に押し込む、その腕を弾こうとして]