[代将に抜擢されたロー・シェンを襲ったわずかな自失は、己の才に自信がないゆえではなく、出自を意識するせいだと感じる。 かつて帝国と砲撃を交えた国の兵であった男。 その後、帝国の兵となることを選び、幾度となく波間に身を投じてきた男。 変節という言葉は、この男には似合わない。 ただ、ひたむきにまっすぐなのだ。潮に灼けた体躯をもつ男は、覚悟の定まった眼差しで進み出た。新しい徽章をその身に受けるべく。その唇が伝えた言葉に、アレクトールは揺るぎない視線を返す。] その信に応えるのが、皇帝《おれ》の使命だ。