― 現在 ―
[ 濁流のように流れた記憶は
脳を揺さぶって当時の感情を呼び起こさせた。 ]
……サ――…、
[ 出しかけた
どこか懐かしいと感じた顔立ちは…瞳は。
かつて遺跡で出会った"彼女"のものではなかっただろうか。
男にしては高い声は…どこかで、聞き覚えがなかっただろうか。
言いたいことも、聞きたいことも、山ほどあった。…けれど。 ]
……………………そう、か。知らないならいいんだ。
君の言うとおり、きっと僕と君とは初対面なんだろう。
ヘンなことを聞いてしまって済まないな…カレル。
[ 彼…彼女が"会ったことがない"と言っているのだから
ラ・ウルタールで聴き慣れた抑揚の特徴的な発音>>151も
確り聞こえたところでロー・シェンが咎めることはない。
何か、事情があるのだろう。
出会った時のように無邪気に再会を喜べたなら
それはとても素晴らしいことだ。
…しかし、あれから時間は大きく進んでしまったのだから
彼女も――ロー・シェンもあの時のままではすでにない。 ]