― 回想・異界門 ―
[三人の様子は、少し離れたところから、何とはなしに見守っていたものの。
余り混ざる気の無かった男は、声をかけられたのが己であることに、一瞬気づかなかった>>171。
一拍遅れてこちらを見る少女の姿に気付けば、視線のみを返す。
それから、ひとつ、頷いた。]
…あぁ。
[間。
初対面で、境遇が似ているとはいえ、仲間でも無ければ一騎打ちの相手でも無い。
名乗り合う、という発想に至らなかった男は、そこで止まる。
三人が名乗り合うのは見てはいたが、その名も記憶に留まっていたかどうか。
尋ねられれば、怪訝な面持ちを見せたであろう。
再度名乗られてしまえば流石に、名乗りを返すが、それもデンプヴォルフ、と姓のみを。
男が正式に名乗るのは、まだしばらく後の話。*]