[目的を果たした青年はマントを翻しながら、煉瓦造りの時計台の上で高らかに笑う。
身に纏うは、闇夜に映える純白のシルクハット。そして、華奢な風貌に見合うタキシード。
盗み取った金剛石は星明かりに照らされ、燦然とした煌きを放っていた。]
シリウスよりも美しく、この手の中で瞬く『星』は、私の物。
さて……今度は何を奪いましょうか。
[彼は手にした宝石に見惚れ、恍惚の表情をうかべる。しかし、その悦びは、時ともに色褪せてゆく一方。
一度熱りが冷めてしまえばそっと目を伏せて、静かにため息をついてしまう。
どんな名品を奪い取れども、満ち足りる事は決してなかった。
慊焉たる想いを抱え込みながら、彼は再び来る夜へと想いを巡らせるのであった――]