[今後も旅をと思わない最大の理由。
それが野宿だった。一人旅となればテントを持つのもキツいし(パーティにいた頃は男性の仲間が持っていた)、食べ物も保存食が多くなる。
今までのようにダンジョンに入らなくて良い分、野宿の回数は減るのだろうが。
それでもできればしたくはなかった。]
私も駆け出しの頃はよくしてもらいました。
女性というだけで冷たい対応されるのは昔からですけど。
色々いいながらも面倒見は良いんですよね。
[変態だが。]
その一言は喉の奥に飲み込んだ。
故郷。その一言は少しだけ胸を苛んだ。
自分の故郷はすでにない。魔物によって全滅させられてしまったから。
自分だけは生き残ったのだから全滅というのは語弊があるかもしれないが。
『運がよかったから』『精霊の加護があったから』。
助かった理由はいくつかあるが、最大の理由は『通りかかった冒険者が助けてくれたから』。
それは女が15の頃。
もうすでに助けてくれた冒険者の容姿も名前も忘れてしまったけれど。
昔を思い出し暫し遠い目をしてしまっていたが、相手の声に現実へと意識を戻す。]