[氷華は少女へ腕を伸ばし、その身を横抱きに抱き上げる。
格好こそ姫君を抱きかかえるそれであるが、丁重な扱いとは程遠く、物を扱うような無造作さと有無を言わせぬ強引さがあった。
そして人の形をしているにも関わらず、氷華の身に温もりはなく、むしろ氷の彫像に人肌の質感を与えたかのような冷たさを感じるであろう]
これより私は己が領域へ向かう。
不満があるなら、その道中にて存分に吐き出すが良かろう。
[そうした所で状況は変わらぬと暗に匂わせつつ、氷華は領域向け踵を返した]
――凍柊の領域では、人の身では声出すこともままならぬ故。
[冷気纏うその身に触れていれば、その言葉の意味も知れようか*]