―回想/教会の尖塔―[――ひとりきりの淋しさが野茨の主を呼ぶ。冴えわたる夜空に浮かぶ月が繋いだ奇跡か。仄暗い部屋には一つきりの窓と一つきりの扉。窓から射し込む優しい月明かりだけが頼りとなる空間。初めての邂逅は幽閉に近い生活を送っていたその時まで遡る。眠れぬ夜に寝台に座る子供は物憂げな吐息を零した。ひとりにも慣れたと思っていたはずなのに夜になれば心の幼さが淋しさを思い出させる。] 叶うなら、誰か――。[傍にいて欲しい。そんな思いをもって声が紡がれる。]