「何をしに来た…っ。僕を殺しに来たのか。」
[怯えて後ろの壁に身を寄せる兄の姿に、弟は困ったように肩を竦める。
―少しだけ哀しげに真紅の瞳を伏せて。]
何故俺が兄上を害さなければならないんですか。
―こんばんは、永のお別れを言いに来ました。
[男は人間ではなくなった。
唯一残っている、人であった頃の縁に別れを告げようと、そう思ってやって来たのだが。
歓迎されるとは思っていなかったが、殺しに来たと思われるのは残念だと。]
「そんなものはいらない。僕とお前はもう関係ない。」
しかし俺の名前はまだ一応伯爵家に残っているでしょう。
それを消して下さっても結構です、と言いに来たのですが。