カークを追ってメイン・サロンから出て行った姿が……僕がベルを見た最後の姿です。
その端末は知りません。僕のではない。
[ダーフィトの質問に答え、置かれた通信機を見てそう言う。
誰のだろうと周囲を見渡すと、「僕のものです。」と彼女の声>>176。
それを聞き、一瞬訝しむ。
彼女が人狼ではないかということ……ではなく、何故彼女のものがそこにあるのかということに。
ノトカーに尋ねる声色に、嘘はなかった。
他の人には分からずとも、怯え、震え、が確かに存在していて。
(もしかして……犯人に仕立てられている?)
凛とした顔で、明日まで待ってほしいというその声に、変わらず震えがあることを聞き取ったが、それ以上に大きな決意が秘められているのを感じ取る。
もし本当にそうであるなら……この犯人、『人狼』はあきらかに自覚があるのではないか。
自身の痕跡を残さず、仕掛けまで用いる……大胆にも、巧妙に。
(……衝動的に行ったものではない。)
そう思い立った途端、ざぁっと血の気が引く音がした。**]