― 深夜の訪問者 ―[夜の帳はとっくに下りた頃。伯爵家の邸宅、その書斎で青碧の髪をした生真面目そうな青年が書物を読み漁っていた。ゆらりと姿を現したのは、真夜中の侵入者。魔性の存在を厭うように机を照らす電灯が明滅する。]「…?っ、お前は…っ。」[不思議に思って顔を上げた青年の瞳は驚愕に見開かれる。]―こんばんは、兄上。[翡翠の瞳は紅に変わり、黒衣に漆黒のローブを羽織った‘弟’の姿が其処にあった。]