― 回想 ―
[思い浮かんだのは花畑だ。
彼女との記憶には、いつも花があった。
風に揺れるのは、紫の花弁に真っ赤な蕊が鮮やかな花々。
一面に広がる花畑の隣にテーブルを置き、茶器を並べる。
水色のワンピースをなびかせながらイルザ──妹は楽しげに笑い、くるくるとよく立ち働いていた。
今年のサフランは良い出来ですよと父が言い、サフラン入りの茶菓子が供される。
両商会を通じて帝国本土とシコンに交易ルートを開こうという話は、やがてグロル海峡を抜ける航路の話にもなるだろう。]
グロル海峡を気兼ねなく通れるなら、大陸の向こう側ともずっと交流しやすくなるでしょうね。
[早くその時が来ればいい、と話した記憶がある。]