[旅支度を整えた鞄の持ち手に、兄が防犯ブザーを括りつけるそばから、黙々と外していく>>131
旅先であれ、護衛よろしく張りつく兄が目に浮かぶ上、
三個は備えを過ぎて不要だろう。何より、邪魔だ。
――家族会議の開催を告げられたのは、不毛な攻防に、
いささか疲労と空腹を覚え出した折]
…ああ、丁度良かった。ご飯冷めちゃうとこだった。
食べながらでもいい?
多めに作ったから、お母さんとお父さんも食べてく?
[キッチンに移動しつつ尋ねれば、両親は兄妹を見比べ、
黙り込んでいる。
マイペースな両親は放っておくことにして、作り置きの料理を
皿によそっては兄に渡し、共同作業でテーブルを埋め尽くす。
秋刀魚の塩焼きに筑前煮、菠薐草のお浸しに舞茸ご飯。
由緒正しき日本の食卓を前に、家族会議は仕切り直された]