[センターで別れた金赤の前髪、頬を擽る柔らかさ。
呼吸を整える唇の動きや、僅かに上気した肌を間近で観察してしまう。]
わ 、…
[抱き着かれれば受け止めるも、すぐ真横にグランドピアノの側板があって。
踊った事で僅かに香る汗の匂いを彼の項の辺りから感じる。
「食欲」よりも別のものを誘われて、心臓が早鐘をうち鳴らし]
俺の方こそ、一緒に踊れて嬉しい。
―――フェリ、もっと …踊ろ。
[そう告げて間もなく。
突上棒は下げられたグランドピアノの広い屋根の上に、流れるようにフェリクスの背を倒す。
彼が後頭部を打たないよう、自らの手で浚ってクッションにし、]