[本来ならば犯人の命を葬るのが最も手っ取り早いであろう。
しかし、今の渓谷を取り巻く状況を作り出した大元がその当人ならば……到底コンスタンツェ達では敵わない。
首筋に、手に付いたリヒャルトの地で魔法陣を描く。
簡易な契約の魔法陣、そこにコンスタンツェの血を垂らせば口付けただけで魔力の供給が可能なのだけれど…]
……なんでかな。
[魔法陣に何の反応もない。
この結界内ではどんな契約も無効になるのだろうか。
リヒャルトを見下ろせば、泣き出しそうな顔で唇を噛んだ。
すん、と鼻を鳴らして、ローブの代わりに膝に乗せた相手の頭を、優しく何度も撫でるのだった。]