[薔薇の香纏う剣呑な視線を柔らかく受け止め、細い首筋に置いた指先を立てる。石英の欠片のごとき白く鋭い爪が肌をぷつりと破った。滲む赤に染まった指先は、爪紅をさしたようにも見えよう。金の眼差しで彼女を縫いとめたまま、指先を口元に運ぶ。自分で言ったとおり、ただの味見だ。] 思ったとおり。 裡に流れる命の水までも芳しい。[ちら、と赤い舌を閃かせて指先を舐め、笑った。]