―教会―
ああ、ニコラス。
そろそろ戻ってくる頃だと思っていたよ。
元気そうで何よりだ。
[教会に着くと、ちょうどニコラスが出てきたところだった。>>127
近況を尋ねる彼の顔には、どこか戸惑いの色がにじんでいる。
3年前の出来事をきっかけに変わってしまった自分にどう接して良いものか、測り兼ねているのだろう。
いつものことだ。
多少の居心地の悪さは感じるものの、自分だってあれ以来うまく笑えていない自覚があるのでお互い様。
彼の様子には特に触れず、口の端をほんの少し上げながら、幼馴染との再会を喜ぶ言葉をかける。]
ああ、今年は豊作だったよ。
おかげで冬も食いっぱぐれなくて済む。
[農家の収入は収穫量に左右される。
大凶作でもない限り、売り物にならない作物を食べて飢えをしのぐことはできるが、それだけではどうにもならないこともある。
もちろんそんな時には助け合うのがこの村の風習だが、自力で賄えるのなら、それに越したことはない。]