――第2エリア・通路――
[なるべく普段は人の通らない道を選んで台車を引いていたけれど、さて誰かと会うことはあったかどうか。
白い猫がこちらへ向かって駆けてきたのは、そんなときだったか。]
…スノウ?どうしたっすか?
[白くてもふもふの身体を揺らして、恐らく自身を探してくれていたのだろう。
何か用だろうかと、白猫の話を聞くそこで知った。
貨物室で、惨劇が起こったことを。>>14>>15]
…………え。
[長く落ちた沈黙。それから出たのは感情の薄い驚き。
警備部の連絡も下りてこない、整備士の女はそれを知らなかったから。
犠牲者が出たということは、確実に今、この船に“人狼”が乗っているということを意味する。
そして犠牲者は、知らない人だが、確か乗客だった人だ。
その人が殺された。もう、無事で帰すことはできない?
そんないくつかの思いがぐるぐると。考えられなくなった頭は、思考を停止していた。
心を落ち着かせる。何も感じないように。
手のひらから零れたもう守れないものは、記憶から消し去るように。
ふう、とひとつ深呼吸。
へらりと笑うことはさすがにできなかったけれど、動揺を殺すことはできただろうか。]