[ふとヨアヒムへと視線を向ける。
朝宿屋を出る前に食べたいものがあるか尋ねたとき、ポテトと林檎のグラタンと答えたヨアヒムが呟いた言葉、”母さんが得意だったんだ”>>66。それはしっかり耳に届いていた。
礼を言われる直前に微かに沈黙したことも、しっかり記憶に残っている。ヨアヒムは母親のことを考えていたのだろうか?と解釈した。]
……。
[自分は母親の記憶は随分あいまいだ。母はいつも仕事に終われて忙しかったから、実質姉に育てられたようなものだった。おまけに戦場に出たあとは一度も故郷に戻っていない。
そんなことを考えていたら、ヨアヒムを不躾に見つめていることに気付いてしまい、誤魔化すためにとってつけたような言葉を口にした。]
その本、俺もあとでいいから読ませて貰えるか?