[>>565疲れた、と言って前髪を掻き上げるレトの手は血に塗れ。ぼろぼろの風体で幽鬼のようにゆらりと立ち上がる彼の姿に男ははたと我に返った。王子の姿は既になく、部屋を出て行くレトを慌てて追う。廊下に蹲り、泣きだすレトの姿>>566はあまりに痛々しくて。光のない瞳に、抱きしめて慰めてやりたかったけれど、手が震えて出来なかった。ソマーリュと一緒に部屋の近くまで送った後、男は逃げるように踵を返してラウンジに向かう。―もし表情が見えていたなら、自分は酷い顔をしていただろう。]