― 魔界:深層 ―
[その世界は、夜に閉ざされているというのに多彩であった。
大地はうっすらと紫紺に輝き、花と実りを知らない草木は青く発光している。
うら寂しい荒野には切り立った崖が在り、
その上には岩盤から生えるように城が突き出ていた。
崖の下は魔界の底と繋がる闇がどろりと湛えられている。
ひとりで過ごすには広すぎる城だが、
彼を抱えて中庭に下りても、誰も出迎えに来なかった。]
普段、私は此処で寝ているか、崖の下を眺めて過ごしている。
[靴裏が渇いた土を詰る。
普段は城に干渉する時間の流れを停めて管理を易くしているが、
己が留守にしていた僅かな時間で、少し草が伸びたようだ。]