[シメオンにとって此の人間は、きっと他人の手に掛けさせたくはない存在なのだろう。そして、昔馴染みを魔物にした女だと解っているだろうに、敢えてシメオンに斬りかかった人間も、また恐らく>>37>>38衝撃に床を揺らし斬り結ぶ二人の姿を、瞬きもせず、退きもせずに暫し見つめ。薄ら感じてはいたことを、漸く結論として、己に言い聞かせる。手出しできる資格は、端からない。この人間に、自ら手を掛ける時があるなら――それは、唯一人血を分けた息子が、灰と化したその後だ]