[話が終わり、医務室を出ようとしたときのこと。
ガートルードに向けたナネッテの言葉に、一瞬息が止まった。
“私が人狼であったなら”>>168
――… 戒めのための言葉であるのだろう、そう、思う。
けれどその言葉に、心臓の少し下、鳩尾のあたりをぐっと押されたような気がした。
ことが起こってから、流されるように必死に走り続けてきて。
殆ど無意識のうちに、旧知の者や言葉を交わした者を、人狼の候補から外している自分がいる。
それ以外の誰かなのではないかと、突き詰めて考えることもせずに、ふわり、思っている。
人狼は、普段から牙を剥いた獣ではなく、ヒトとしての姿も人格も持つものなのだと、聞いたことはあるというのに。
けれど、それでも。
お人好しと言って緩めてくれた、どこか困ったような、ほっとしたような表情は、
どうしたって、いまこのとき、疑うことが出来ずにいるのだ。>>162
お人好し、と、彼女は言った。>>162
もしかしたら少しは、そういうところもあるのかもしれないけれど。
きっと、それだけではなくて――…
――向かいわなければならないのはこれから、なのかもしれない。]