― シュヴァルベ・公国側旧市街地痕 ―
[>>65 顔を、見ていなかった。……久しく。
軍に戻ってから前線を転々として、それなりに前線の兵士とは面識ができていた。それなのに会わないのであれば、故郷に帰ったか、……あちら側にいるか、だ]
――……久しぶり、カーク先生。
[口の中だけで呟く。
銃のスコープをグラス代わりにして、公国の補給部隊を取り巻く警備兵の数を視認する。
荷を一気に焼くほどの火薬は、両軍とも持ち合わせていないだろう。特に帝国は]
……落とし穴でも掘りたかったけど、互いに時間がなかったな。
[小細工を弄せなければ、白兵戦で片を付けることになるのだろう。
崩れ落ちそうな建物の中。気配を極力消し、補給軍の移動をただ黙視した。
暗くなるのを待って、できるだけ速やかに戻る。
――…途中、幾度も超えるべき難所はあるのだが**]