[当初は一人で向かうつもりだった。
そも、約を交わしたのは自分だから、というのもある。
だが、それだけはさせられぬ、という族長の強い意思もあり、鳥使いの青年が一人、同行者としてつけられた]
……に、しても。
騎士団の部隊が全滅、か……。
[北へ向かう途中、ぽつり、と零す。
戦いである以上、命が失われるのは避けられぬ、と。
頭でわかっていても、感情が覚束ない]
あのひとも。
もう、いないのかな……。
[小さく呟く。
結局名乗る事なく、名も聞く事もなかった人。
けれど、強い印象を自分の内に残した人。
ある意味では、自身の興味をより強く外へ向けた彼の人も行ってしまったのかと。
そう思うと少しだけ、苦しいような、そんな心地がして。
小猿が案ずるようにきぃ、と鳴くのに大丈夫、と返すものの瞳の翳りはしばらく晴れなかった]