― 空色の思い出 ―
[ それはまだ兄が生きていた頃。
ロー・シェンの書き上げた論文が世に認められ始めて、
一人で調査に行ってみないかと持ちかけられたのだった。
行き先は、ル・ウルタール。
近年、経済成長の目覚しい星だが
その反面、カビの生えたような風習が色濃く残され
今時滅多に耳にしないような"奴隷"という言葉も
当たり前のように使われているとか、なんとか。
そんな未開の地に行くのはどうも気が進まなかったが、
手つかずで残されている多くの遺跡があると聞けば話は別で
かの星へ出立する頃にはすっかり上機嫌になっていた。 ]
[ …今となっては懐かしい思い出の一つ。 ]
「 案外、現地の民に紛れて調査が出来るかもしれないな 」
[ そう言って笑っていた兄に、
土産話を楽しみにしておくんだねと言い残して母星を発った。 ]