負傷兵 シモン

　貴様ァ！！

［気が付いたら俺は、杖でアイツを何度も何度も殴りつけていた。その時の俺は相当ヤバい顔をしていたらしい。激昂してどんな言葉でアイツを罵ったのかももうよく覚えていない。ただ、
　『信じていたのに…お前だけは……！』
　――あいつなら安心だと、信じていたから。
　だから、裏切られた事が余計に哀しくて、腹立たしくて……］

［そいつを殴った夜、村の教会が燃えた。
　狼の仲間が火を放ち、そいつ共々村から逃亡したんだ。


　あっけなく焼け落ちる教会。
　炎は周りの家にも燃え拡がっていく。


　"終わった"、と思った。


　だから俺は燃え盛る村に背を向けて、
　家に戻って、納屋の奥で首を吊った。*］