[一族の領域に最も近い街──スルジエ。
そこの住人とは、互いに領域を侵さず、山岳の恵みを分け合えている、と認識していたが。
最近、暗黙の了解によって定められた境界を越えてくる者が少しずつ増えているらしい。
それが、街全体の意思なのか、個々人の行動なのかを判ずる術はない。
問題なのは、侵入がされているという事実と、里の者たちがそれをどう受け止めるか、の方だ。
北島に残った古き同胞が、森を巡って諍いを繰り返している、という話は学館で学ぶようになってから、何度も聞いた。
ウェントゥスもその道をたどる事になるのか、と。
それだけは、避けたいのが本音なのだが]
……カナンの事であれだけ騒いだ後だし。
気、たってる連中、どーにか抑えないとなんないかなぁ……。
[自身が繰り返して来た、閉じこもるばかりではいけない、という主張がおかしな方向に響いているかも知れない。
そう、考えるとなんだか気が重い]