― 城壁上 ―[ 城壁全てを崩し尽くさん勢いで飛来する投石を睨んで腰に下げたサーベルの柄を軽く握り締める。一年前、陥落した首都から辛うじて落ち延び、一報を伝えた使者は、父の部下でもある魔導師団の伝令だった。彼は、父の最後の様子をも男に伝え、その愛剣を決死の覚悟で確保して形見として手渡してくれた。 ]『この剣だけしか…御遺言を残される事も叶わず…』十分です。親父殿は遺言など残す人じゃない。[ ただ残された剣の重さだけが全てだと、男は知っている。 ]