― 西の塔 ―
[どうする心算かと問う息子の声に、すいと視線を流し>>166]
……、そうねぇ。
貴方は道中のお役目も済んだ事だし、もし加勢をと思うなら、
行ってくれて構わないのよ?
このお城の敷地内くらいなら、何とか範囲内の筈だから。
多分それより先に、紹介状も持たないお客様の結界に
引っ掛かると思うわ。
[求められた物から逸れた答えを返し、微笑んだ。
血を直に注ぎ込んだ唯一の息子の気配なら、一方的に結んだ呪と相俟って、ある程度距離を隔てても感知できる。
それ故、対になる制約を破らぬ限りは、彼の挙動が封じられる事はないのだと。
――不意に身体が部屋ごと揺さぶられ、冷めた微笑が、微かに強張る>>132]