[ それから、約50年。
長い付き合いだ。
無理して大人の仮面を被った子ども。
表情を殺し、個を殺し。
笑うことを、諦めた子ども。
心を横断するように、鉤状に切れた傷は、いまだに塞がらず。
ジクジクとした疼くような痛みを伝え、消してかさぶたに成りはしない。
船内も移ろう。
店の多くが、アンドロイド主体の運営になり。
稽古場に響く銀糸の怒鳴り声も、最早懐かしさを思える程。
子どもで居させてくれた 花の匂いのする "あの人" ももう居らず。 ]
………、
[ 吐き出し口のないままに、腹に沈めることだけが上手くなる。
センチな感傷は、本日二杯目の珈琲とともに腹に飲み込まれて消えた。
誰かに声を掛けられたなら、伴に食事をしようとするだろう。
そうでなければ、スノウとラヴィのもふもふを堪能しながら
しばらくのんびりとした時間を過ごしたに違いない。 ]**