― しばらく後・クラタエグス砦 ―
[ 次に目覚めた時、身体から熱と痛みは随分と引いていた。或は寝ている間に、更に治癒の術が使われたのかもしれない。まだ万全とは言い難いが、なんとか動くことは出来そうだった ]
『食事だ』
[ 目覚めてすぐに、兵士の一人が、スープとパンだけの食事を運んでくる。後ろに監視の兵らしいのが二人もついている辺り、随分と大袈裟に警戒されているものだと苦笑が零れた。誇大広告の効果覿面といったところだろうか? ]
……なあ、この軍に竜人がいるよな?
[ 兵士が立ち去る前、ふと思いついて声をかける。兵士はどんな様子を見せたか。あまり良い感情を抱いているようには見えなかったかもしれない ]
…いや、珍しい奴を抱えてるもんだと思ってさ。単なる好奇心、てやつだ。
[ 本当は、伝えたい事がある…だが、それをこの兵に言う事は、彼女の立場を悪くするだろうと、諦めた ]