― 城内・庭園 ―
[ 王宮の庭園は庭師が真面目に働いているせいか
生垣には余分な葉の一本も見えず、
足元に這う草はそれは綺麗に刈り揃えられている。
あまりに整然とし過ぎている様子は、
この画家にはいっそ不自然なように感じられた。 ]
絵というのは、ありのままを描いたものより
買い手の望む偶像を描いた方が売れるんだよ
…そう言った意味では、ボクが描いているのは
『絵』ではないのかもしれない。
[ 緑が茶色となる冬や、
赤い色が庭園に混ざり始める秋ではなかっただろう。
あるとき、ふと思いついて写生をしていたら声がかかった。
特徴的な訛りを含む声の相手に顔を知られていずとも、
言葉尻から画家であると知れたかもしれない。 ]