── 時は遡り・道中 ──
[宿へ着くまでの短い時間のこと
行商人とのやり取りは、少しの不思議さと感心をくれた。
確かに羊飼いを楽だと思ったことはない
特にあの子がいなくなってからはそうだ。
けれど、きっと何処にでもある有り触れた仕事の筈
街や村を渡り歩き、戦場に赴くのであろう彼が
あんな風に目をみはるなんて。>>164]
そんな、アルビンさんのほうがずっと……
[抱いたのは謙遜というよりはちょっとした戸惑い
やはり、彼の名乗りを聞けばそうは思えなく
穏やかな物腰の行商人はそれだけ優しいのだろうか。
それとも互いにしたことのない経験に感心しているのか。
そうした流れで問い掛けた疑問に
アルビンさんは快く答えてくれる。>>166]