[その時、父と彼の人の間にどんな言葉が交わされたのかは覚えていない。
何せこちらは、高熱で色々と遠い世界を彷徨っていたから。
いずれにせよ、この出会いによって自分は一命を取り留め、父はその恩を返すために、と宰相の元に留まる事を決めた]
「……命の恩には、命を持って返す。
それが、セイガの一族のしきたりだ」
[その『一族』は、自分たちしかいないらしいが。
それが、父・リカルド・フォラータの口癖だった。
幾度となく聞かされていた事もあり、自分もそれに従うのが自然だと思った。
だからこそ、父が死した後もこの地に留まり、受け継いだ太刀の力を持ってこの地を護るという道を選んだ]
[……もっとも、そうした理由の内には、年下の幼馴染の存在も大きかったのだが]