― 回想/王府:シメオンと ―
――――……初めまして、
[>>0:90 巫女姫との謁見をシメオンが終え、丁度、話がひと段落したころ。
物陰から声を掛ける。いつから其処に居たのか。何処から現れたのか。まるで存在感の無い、蜉蝣のような身振りで一礼をし。
優美な笑顔のままでアレクシスは挨拶をした。]
ああ、どうか警戒なさらないで下さいませ。
アレクシス・ユレと申します。
[もし彼が警戒をするようならば、お辞儀の恰好から身を崩さず。
穏やかな表情のままで、名を告げた。]
シメオン・オリオール様。
この度は、遠路はるばるよくぞ王府まで。
嵐のなか、ご苦労様でした。
[蠍のような緋色の双眸を眺めながら、否、値踏みしながら。影は、見据える。
窓から、季節外れの薄羽蜉蝣が入り込んできた。]