[両国間の緊張が高まる中、父達は武力衝突を回避すべく奔走していた。
帝国内の開戦慎重派とも、渡りを付けようとしていたと聞く]
――トゥーレーヌ公爵、ですか?
[その名を聞けば、蘇るのは5年前の記憶。
あまりにも突然の、別れだった]
……知っています。
おそらく、よく知っていた……人です。
[学生時代、生徒会長と役員として共に過ごした時間は長い。剣の手ほどきも受けたし、座学の相談にのってもらったことも何度もあった。
親しかった、と言っていいだろう]
でも、
[そんなことは、今となっては何の役にも立たなかった。
単なる一士官にすぎない自分に、帝国の公爵家当主たる彼との橋渡しなど、できるはずもない]
……遠い、ですね。**