[>>148 逃げろと、言った筈だと。遠くの方から声がした。その言葉は。あの日の赤と空気と一緒に固められ、胸の空洞に転がっている。――わからなかったのだ、本当に。――何から逃げればいいのか、何処へ行ったらよかったのか] 死んだという男の言葉を、良く覚えてんね。 まるで、今でも傍にいるみたい。 ――それならお前に尋ねるよ。 逃げろって、何処へ? 世界で一番居たい場所を捨てて、逃げる場所なんてどこにある。 .