[ ふわり、と風に薄紅色の髪がなびくと、同じ色の大鹿が魔人の前に膝を折る。 ]さて、行こうか。[ 大鹿の背に横座りになった魔人の姿は黒の打掛、裾には桜の花吹雪、神魔の装いに類似した、その姿を見かけた者が、あれが神魔か、と、見誤った事も数えきれぬ。実際、神魔が森を留守にした間は、魔人はその代役を勤めてもいたし、見間違えた相手に訂正してやることもなかった。 ]