[この場に柊の氷樹は幾本あったのだろうか。
樹に背を叩きつけられた後、氷柱を振り回し、這った先は冬神から逃れようとする方向。
其れとも、逃げようとして、唯一の命と思しき場所へ戻って来たのだろうか?
うつ伏せに、まるで氷像の様に霜付き斃れ、顔だけを斜めに反らし頭上を見上げた。]
(嗚呼、この木……、)
[ぼやける視界の中、緑だけが見える。
そうだ、ここに来る前に指先をチクリ刺した、柊の木。
意識してなければ、それが柊の花の薫りとすら普段も気づかなかったろう。
白い花は見えないが、薫りすら凍り付きそうな中なのに、何故か不思議と甘い芳香が漂う。]
…き…すれば良い。
……、…………は、…から。
[好きにすれば良い。でも、望み通りにはならないから。
罅割れた唇が紡ぐ、そんな捨て台詞のような最後の言葉は冬神の耳に届かずとも。
最後まで、顎を掴んだ冬神>>175を睨みつけて、白さも消えゆく呼気を吐き出した。*]