―ピアノの音―
[船員と言えども休暇は存在する。
整備士の婆さんがシルバーメリー号に可愛いなんて
愛言葉を吐いている時間が丁度それに当たる。
楕円系の曲線美が分からないとは。とか。
散々に言われてきたことだが、ダーフィトには
シルバーメリー号の可愛さというやつは全く理解できない。
少なくともシルバーメリー号本体よりも
内蔵されたシステムである羊や猫や兎といった
ホログラフの動物たちの方が余程可愛らしい。
そう言える程度の感性は持ち合わせていた。
銀羊号。
世間一般では通称とされるその名も
ダーフィトはほとんど使うことがない。
シルバーメリー号が宇宙空間の航行を始める前。
最後にその名を口にしたのは、とある酒場でのこと。]