>>150………。[わかっているだろうのに惚けるような声音に、唇を引き締める。刷いた朱は暗闇では見えなかったろう。――誰が傍にいるわけでもないのに、見えなくてよかった、と心底思う]……思い出す事など何もない。『エルンスト・ヒンメル』は死んだ筈だ。あれは、俺とは関わりのない男だ。[そう言い切る。出来るだけきっぱりと、聞こえるように。――それでも動揺は、彼に伝わってしまったかもしれないが]