[そして、薄氷めいた冷ややかな応対のうちにシェットラントが再び口端にのせた名は、ベリアンのものであって、ベリアンではない”サルーク”だった。
家族をもったことのないベリアンに、後見人だった名誉学長が遺贈した姓。
もっとも、まともな交流のなかったシェットラントに話したこともなければ、彼が知るよしもない入学前の話だったが、
4年前のシェットラント──氷人形そのものの振る舞いに苛立ちと劣等感を煽られたベリアンの精神を、さらに逆撫でして余り在る一事であった。]
──…のっ
[死霊馬の蹄が乗り手の声を代弁するかのように、地を掻いた。]