[そうして――…「人狼」の災禍や、酷く辛いことがある度に。
幾つの記憶が、大切な人たちの面影が、
優しいつもりの残酷な脳内寄生生物の揺り籠の中に、
”古い記憶”として封じられたのかは、もう分からない。
明晰な記憶は”今の記憶”―-…この船に乗ってからのものだけ。
ああ、分かってるよ。
「メトセラ」…お前には、悪気はないんだろう。
「宿主」である俺が、酷く哀しんだり苦しむと、居心地が悪いから。
俺が”死”を選ばずにいられなくなったら、お前も死ぬから。
お前が居心地の良いまま、飼うように生かしてるだけ。
お前がそうしなかったら、こんな風にへらへら笑えないのも。
ただ極稀に、誰かの手が揺り籠を強く揺らす時には。
記憶の箱が零れ落ち、開く時もある…*]