-史書に載らない話-[宴会場隅のテーブルに、グラスに注いだワインを置いて。] ま、おひとつ、どうぞ。[誰に言う訳でもなく、男はそう囁いた。母の故郷では、死者の為に食事を用意すると言う風習があった。なら酒ぐらい用意しても許されるのでは、と。この場を覗きに来ているかもしれない、誰かの為に。*]