[だが、耳に触れる彼女の声に、ハッと傍らを見やった。]
―――アプサラス、
[喉に声が絡まる。
夜会で婦女を惑わす遊び癖を持ちながら、
彼女にはいつも先んじられる。
己の名を奏で、己の下へ訪れて、
それでも尚、歩み添う道を選んでくれた。
聖将と魔物、これは禁忌の恋。
彼にも覚えあるかもしれない、何度も歴史の中で繰り返される光景。
この先、生き延びようと、彼女は必ず迫害を受ける。
運命は繰り返され、神子が父よ、母よと呼べなかったように。
奥歯を噛んで、喉を辛く圧迫する感覚を無理に嚥下すると、
絶え絶えと呼気を散らした。]