[人々の輪から離れれば、その姿もより人目にも付きやすくなる。そこに兄と幼馴染や、はたまた外務長官たるフィオンの姿はあっただろうか。
己を知る誰かに見つかれば、咎めを受けるかと思えば極力人目に立たぬように振る舞うつもりではあるけれど。]
(……あれ?)
[それでもすらりと伸びた軍服の背と、見覚えのある少し癖のある髪を雑踏の中に見つければ自然と顔がそちらへと向く。あれは兄の姿ではなかったか。>>160]
にい───…
[兄様。と声を掛けようとして、少し躊躇った。傍らのローレルへと目を向ける。静かにしておくべきかと無言の相談を彼女へと向け。]