[馬を下りて、長剣を拾う。濃い緑色の風信子石を柄頭に戴いた上等な剣だ。輝度の高い宝石を透かして見れば、かつての宰相の貌と、もう一つの面影が浮かび上がる。父親とともに城へ来ているのを時折見かけた少年。彼とは、よく遊んだ。剣術試合の真似事もしたし、もっと子供らしい他愛のない遊びもした。年上の銀髪の少年が一緒にいた時は、やはり一緒になって走り回った。未来に影のひとつも無かったころの、無垢な記憶だ。] 来るか?[面影の彼に問いかける。来る気がした。理由はない。ただ単に、確信した。]